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人はどう読むのか – 読む作業のメカニズム

前回は「人はどう見るのか」という点について記事にしましたが、今回は「人はどう読むのか」という事について読む時の人の視線の動きや読みやすい文字について色々と調べた事を書きたいと思います。

読む作業は思っている程滑らかではない

人間は文章を読む時、滑らかに文字を読んでいる訳ではなく、「1点を見つめる」という事と「高速に視線を移動する」という事を繰り返しています。1点を見つめる事を固視と呼び、高速に視線を移動する事を跳躍運動(サッカード)と呼びます。

文章の改行時には行末から次の行頭までの距離があるため、改行が多い程読むのに時間がかかります。
しかし、印象の観点から言えば1行あたりの文字数が少ない方が好まれると言われています。おそらく文字数が多いと情報量が多くて疲れる印象になり、抵抗感が生まれてしまうためだと思います。

Webページにおいては「1行の文字数について考える。| selfree」 などを見ると1行あたり35文字前後が読みやすいという調べが多いようです。

予測しながら文字を読んでいる

まずは以下の文を見てみてください。

こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。
この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか
にんんげ は もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。
どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?
ちんゃと よためら はのんう よしろく

上記の文章はよく見ると文字の順番がおかしくなっていますが、それでも読む事ができると思います。
これは単語を構成する文字を並べ替えても最初と最後の文字が合っていれば読めてしまう現象で「Typoglycemia」と呼ばれるそうです。

これを読む事が出来るのは、脳が過去に得た知識をもとに予測し、誤字修正を自動的に行なっているためです。逆に言えば、日本語を読むのが苦手な人の場合だと予測が働かないため、上記の文を上手く読む事は出来ないでしょう。

見出しは文章を予測させる

以下の文が何について説明されているか分かるでしょうか。

見出しサンプル_見出し無

上記の原文は「デザイン | Wikipedia」の一文ですが、見出しを加えると見出し以下の本文が何を表すのか予測できるので文章が理解しやすくなると思います。

見出しサンプル_見出し有

このように、人間は過去に得た知識や経験をもとに内容を予測しながら文章を読んでいます。
別の見方をすると、人や文脈によって異なる意味合いで認識される可能性がある事に注意が必要です。
例えば、「すみません」という言葉は日本では誰かに謝る時と尋ねる時の両方のシーンで使う事がありますが、文脈によって意味合いが変わります。

読みやすい文章とは

文字の読みやすさを構成する要素として、以下の3つがあります。

  • 視認性:文字の見やすさ。文字色と背景色の組み合わせ、文字の大きさが適切かなど。
  • 可読性:文字の読みやすさ。文字が理解しやすいか、正確に読めるか、疲労を感じさせないかなど。
  • 判読性:文字の意味の分かりやすさ。誤読をさせずに正確に文章の意味が伝わるかなど。

それぞれの詳細については以下の記事が参考になります。

読みやすさは経験に寄るところが大きい

文字を読む時にはパターン認識が行われています。
ゴシック体、明朝体などのフォントについて、それ自体に読みやすさに差があるわけではなく、読者の経験値が高いものが結果的に読みやすいと判断されます。ただし、小さい文字の場合は明朝体よりゴシック体の方が視認性が高いと言われています。

また、「可読性ー読みやすさの科学」によると、人間の動眼筋の構造的には横組の文字の方が読みやすく、実際の調査でも縦組より横組の方が読了時間が速い結果となっています。
しかし、高齢者向けの調査では縦組の方が読みやすいという結果も出ており、読者層やコンテンツによっては縦組の方が好まれる可能性があります。

読みやすい文字の大きさ

Googleのガイドラインでは、16CSSピクセルを基本フォントサイズとされており、Material DesignではBody 14sp(Device), 13sp(Desktop)となっています。また、iOS Human Interface Guidelineでは、ユーザーが「極小」を選択しても11ポイント以上になるように推奨しています。
書体によって同じフォントサイズでもx-heightによって大きさが異なって見える場合もあるので、必ずしもこれらのフォントサイズが適正とは限りませんが1つの参考情報になると思います。

xheight
引用元:x-height – Wikipedia

まとめ

今回は人間が読む時にどのようなメカニズムが働いているのかを調べたものを幾つかピックアップしましたが、デザインを行う上では以下の点を意識すると良いと思いました。

  • 読む速度を重視する場合は行を長くし、重視しない場合は行を短くする
  • 読者や文脈に合わせて意味が適切に伝わるように言葉を選ぶ
  • 読者層の年齢やコンテンツに合わせて慣れ親しんだ文字をスタイリングする

テキストはあらゆる分野において、最も基礎的なユーザーインターフェースなので、デザインする際には見栄えだけではなく、文字の読みやすさを考える事が大切だと思います。

その他参考